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令相互作用と関係性強化の交錯関係性の前提条件が整ったら、企業は対象顧客との相互作用によって共創価値を創っていく。
そのプロセスは、まず企業が自らの思いをベースに仮説的価値物を創造し、それを顧客に投げかける。
顧客はその仮説的価値物に対し多様な反応を示すが、多くは予期しえない偶発的なものである。
その偶発的反応を企業の前線にいるエンパワーされた社員が自らの価値観と企業の思いを勘案しながら取捨選択的に取り込み、新しい価値につくり変えて再び相手に投げかける。
この企業と顧客の相互作用のキャッチボールによって、双方納得型の共創価値がしだいに実現されてくる。
この価値は、双方のニーズを反映したものだから、「正当化された価値」という性格をもつ。
この時、企業と顧客はこの正当化された価値を媒介にして、さらに高い関係性を築くことになる。
顧客はその正当化された価値をベースにして自分の周辺の知人・友人に自らの体験や価値物のすばらしさを吹聴する。
まさにこの顧客は、「客」が客を呼ぶ、伝道師の役割を演じてくれる。
基本的な第一次関係をつくって、それをベースにして相互作用を起こし、そのプロセスのなかで企業と顧客とで共通の価値のスイート・スポットを追求し、その結果としてより高い関係性を築くというこの方式は、今日のように未来の顧客ニーズが読めない時代には、適合的なやり方といえようこの関係性と相互作用とを互いに目的と手段とを入れ替えながら「あざなえる縄」の如くに進化していくことは、事業運営の基本である顧客創造と維持にとっては、本質的なやり方ともいえる。
かつてTOTOのシャンプー・ドレッサーが、完成度の高い大型洗面台を作った時、初期コンセプトが受け入れられないなかで、社員の一部や関係の深いユーザーに購入してもらい、その中から「朝シャン」という偶発的な発見によって価値のスイト・スポットをみつけてヒット商品に仕立て上げた例は、このプロセスを説明している。
おわりに本章ではまず、時代の変化とともに変容してきたマーケティングの仕組みとその性格をたどってみた。
また、顧客満足の追求とロイヤル・カスタマーの創造という今日的仕組み革新の性格を明らかにした。
仕組み革新の時代需要の停滞と競争激化の中で、時代はいま革新的な仕組みを求めている。
マーケティングはいつの時代にあっても、この革新的な仕組みによって事業の成長を促し、社会の豊かさに貢献してきた。
仕組み革新という新たな切り口で新時代へのフレーク・スルーを期待したい。
ビジネスや商売のエッセンスは「千客万来、門前市をなす」状態をつくることである。
東京の郊外、青梅市にある老人専門病院、A病院は、入院するのに二年半近く待つ、まさに千客万来の病院である。
きわめて高い従業員満足を通じ、患者と家族への高い顧客満足を達成し、しかも病院全体の七割が赤字といわれるなかで、関東随一の規模(八三二床)を誇りながら健全な収益性をも維持している。
ここでは、A病院の事例をもとに新しい事業運営モデルとその革新を考えてみよう。
ある識者は、一九九〇年代の「失われた一〇年」にかわって、その後は「混乱の一〇年」、「狂った一〇年」が始まったと指摘する。
その是非の判断には、しばらく時聞を要するが、多くの事業やその経営者が混迷と混沌のなかにいることは察しうる。
このような時代には、自らの意思や思いを未来に向けて打ち出すアンピション(大志、夢、野望)が必要である。
A病院の創設者であるO宣夫院長(現理事長)は、一九八〇年代に大きなアンピションをもっと老人専門病院を設立する。
その思いは以下に端的に示されている。
「私が老人医療に従事しようと思ったきっかけは、友人の祖母の入院先を探すために訪れた老人病院の光景で、汚い,暗い、臭いといった悲惨な状況にとてもショックを受けたものです。
その時、つくづく高齢者を受け入れる医療施設がほとんどないことに気づき、また自らの両親の老後を考える広及び、お年寄りが喜ぶ施設を創りたいと決心したわけです」。
その結果、同病院の一貫したポリシーである「自分の親を安心して預けられる施設を創る」が明確になる。
そして、その延長上に今日の同病院の理念である「老後の安心と輝きを創造する」が定まったのである。
サービス業としての病院千客万来の仕組み革新この理念を生かすための方法は、病院側の徹底した介護奉仕しかない。
しかし、従来の病院のもつ「白衣の天使」や「聖職」といった犠牲的精神の奉仕では重く、双方に疲れが残る。
そこで同病院は、その出発点を「サービス業」、つまり介護サービスを「業(ビジネス)」として行おうと考える。
ビジネスの社会的役割は、売り手と買い手が自由意思と納得の上で交換(ギブ・アンド・テイク)を行い、それによって双方が与えたものより、受け取ったものの価値が向上するようになるものだから、結果的に双方の知覚価値を高めることになる。
とすれば、介護サービスの売り子(病院)は、買い手(患者と家族)が喜んで支払う対価以上のサービス価値(満足)を提供するように努力すれば、双方とも幸せになれる。
「売り手発・売り手着」から「買い手発・買い手着」への発想転換である。
「病院はサービス業だ」という信念が固まったら、一流のサービス業のあり方を徹底的に追求すればよい。
患者さま同病院の第一の革新的試みは、患者を「患者さま」と敬語で呼ぶことに始まる。
サービス業は「顧客発・顧客着」だから、従来の病院のように病院発の施し的な発想は利かなくなる。
革新心思想を明確にするために、まず呼び方という形から入ることにした。
当初は、職員、医師、病院業界などから、あらゆる批判と反対を受けたというが、それこそが革新の意味であり、成功条件でもある。
誰もが納得する常識では、新しい組織の意思や思想を方向づける革新など起こりえないからである。
なぜ、「さま」を付けねばならないのかをスタッフ聞で議論すれば、おのずとサービス業というものに対する内部の共通認識が生まれてくる。
O院長(現理事長)によれば、「誰もがてらいなく患者さまと言えるようになったとき、病院は一皮むけた」という(なお、本章では特別の場合を除き「患者」と略称する)。
「患者さま」と呼ぶ効果は、病院の運営の主役が誰かを明確にしたのみならず、病院全体の雰囲気を明るく柔らかくする。
従来なら「何だ、あのくだらん患者は」と医師が怒鳴るところが、「患者さま」と言わねばならないなら「あの少し気難しい患者さまは」とていねいになる。
これがサービス業だろう。
九九人の努力も一人のいい加減な対応で病院の評価をゼロにしてしまうという考え方である。
同病院では、この思想をたんに思想にとどめるのではなく、いかにしてこのマイナス一を減らすかの仕組みを実行する。
サービス業は顧客発想だから、そのためには従来のピラミッド組織は不都合である。
ピラミッド組織は、軍隊や体育会には適する。
そこでは上の命令に従って動く上司が部下を評価する評価が必要になる。
しかし、サービス業はとくに顧客中心に動くことが求められるから、逆ピラミッド組織が適切になる。
だが、ただ組織図だけを逆様に描いて終わってしまったら文字通り「絵に描いたモチ」にすぎない。
同病院は、逆ピラミッド組織という骨に血と肉を付与する形で「全員評価システム」を導入する。
この仕組みは、全職員が自分以外の職員を「非常に良い」から「非常に悪い」の五点尺度で評価する方法である。
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